路上

随分前の話になるのですが。「ゆず」や「19」なんてフォークデュオが流行った時代、

 

 

深夜の駅前とか広場にストリートミュージシャンを目指す若者が一時増えてたんですよね。

 

 

わりかし大き目の駅や公園に行くとだいたいジャカジャカ聞こえてくる。

 

 

その日、僕は待ち合わせの為 一人地元の駅前のベンチに腰掛ける。

 

 

時刻は23時過ぎ。

 

その辺で若いにーちゃんが地べたに座りギターを弾いてる。

 

 

スマホなんかない時代でしたから、暇つぶしも兼ねて下手くそだか上手なのか微妙なギターの音色に耳を傾ける。

 

 

 

そんな時、僕の目の前に一人の黒人が座る。

 

 

目の前と言っても10メートルも先だけど。

 

 

見た目10代くらいかな。とにかく若い。そしてギターを担いでるから、この子もストリートでやんのかな。

 

 

ギターをがさつにケースから出しておもむろに弾き始めた黒人の彼。

 

ギターはまぁまぁな腕前だったけどとにかく歌が上手い。

 

 

知らない洋楽をゆっくりと歌い上げるその声に任せ、目を閉じるとちょっとしたBARの様。

 

 

 

あっという間に心地よい時間が終わり、彼はすぐさま次の歌。

 

 

イントロでは分からなかったけど、歌いだしで分かった。

 

サザンオールスターズの「涙のキッス」だ。

 

 

 

日本語のイントネーションが微妙な所はあったけど、歌が上手いのでそんなに気にならない。むしろ味がある。

 

 

彼の周りに観客が2・3人増える。

 

 

僕は観客のせいで見えなくなった彼を探すようにベンチの位置を変える。

 

 

素敵な時間。

 

 

 

 

涙のキッス

 

今すぐ逢って見つめる素振りをしてみても
なぜに黙って心離れてしまう?
泣かないで夜が辛くても
雨に打たれた花のように

 

 

大袈裟でなくてここでお酒でも飲みたい感じ。

それくらい黒人の彼の歌は心地よかった。

 

 


真面(まじ)でおこった時ほど素顔が愛しくて
互いにもっと解かり合えてたつもり
行かないで胸が痛むから
他の誰かと出逢うために

 

 

 

サビに近づくに連れ、更に増えるギャラリー。

えぇい。俺が1番目の客だぞ。

 

ひょっとしたら彼。今後歌手としてものすごい売れるかもしれない。

その時、僕は絶対ライブに行こう。そしていつか言うんだ。

 

「あの日、〇〇駅で歌ってましたよね。僕聞いてましたよ。」って。

 


涙のキック もう一度

 

ん!?

 


誰よりも愛してる
最後のキック もう一度だけダメじゃねーか!!

 

 

んだよ涙のキックて!!

 

 

 

いじめられっ子の

逆襲の歌になってんじゃねーか!!

 

 

 

君を胸に抱いて

 

 

 

最後仲直りしてんじゃねーか(笑)

 

 

 

 

ギャラリーはいなくなり、僕も待ち合わせの相手が来たので半笑いでその場を去りました。

 

 

 

曲は2番のサビで彼はまたキック言うてました(笑)