偽善

「あの…すみません。」

 

 

昨夜、仕事帰りに駅まで歩いてた所 弱弱しい声が背後から聞こえたので振り返る。

 

時刻は21時過ぎ。

 

駅に近かったし、時間もそんなに遅くはなかったので人通りは少なくはない。

 

 

「すみません、呼び止めて。」

 

そこには60~70歳であろうか。年配の男性が肩を縮めて申し訳なさそうに立っている。

 

身長は160cmあるかないか。

 

道に迷ってるのかなと思い、極力不機嫌ではない声色で返事をする。

 

 

「はいはい?どうした?」

 

 

「あの・・・すみませんね。突然。」

 

 

「ん。いいよ。」

 

 

身なりがまともだったから最初は気づかなかったが、男はホームレスだと確信。

 

 

髪はボサボサ。着ている服装はまともだが汚れが目立つ。

 

男の横に置かれた大きなバッグ。そしてビニール傘。

 

 

「すみません。呼び止めて。」

 

 

道案内ではなさそうだ。どうせ物乞いであろうか。それならもう行こうかな。と思った時。

 

 

ふと頭を過る。

 

 

(結果どうあれ、これブログのネタになるかな?)と。

 

 

ならば話を聞こう。

 

 

道行く通行人が私と、その年配の男をチラリと見ながら通り過ぎる。

 

 

男からなかなか次の言葉が出てこない。

 

 

緊張しているようだ。手がガタガタ震えている。それはけっしてアル中とかの禁断症状ではない震え。

 

声は小さくカスカスに枯れている声。

 

 

ようやく男が言葉を振り絞る。

 

「そこに・・セブンイレブンあるでしょ?」

 

男が指さす方向にはどこにでもあるセブンイレブン

 

 

「ん。あるよ?」

 

 

「あの…」

 

 

「・・・・。」

 

 

はたから見れば私が男性を恐喝してるように見えるだろうか。

 

いやいや違うよ?

 

 

突然声を掛けられて突然もじもじしだしたんだから。

 

これが若い女性ならどんなに幸せか。

 

 

「すみません。突然声かけて…。あのですね…初対面の方にこんな事言うのは大変申し訳ないのですが。」

 

 

金を恵んでくれ。

 

 

この言葉が出た時点で私はそのまま帰るつもりでした。

 

 

だが、男は

 

 

「そこのセブンイレブンでおにぎり一つで構いません…ご馳走していただけないでしょうか。」

 

 

なるほど。…そう来たか。

 

 

勇気を振り絞って声かけたのか、顔を真っ赤にして男は言い切った。

 

 

プライドもあったのかもしれない。

 

 

心の底から出た言葉のように思えた。

 

おそらく何時間も前から声を掛け続けてきたのであろう。しかも夜とはいえこの暑さ。

 

 

顔は脂汗でてかてか。

 

私の返事を待つのみとなった男は下を向いてしまった。

 

 

おにぎり一つ奢る金くらい当然ある。

 

 

ある…が、

 

 

はい、そうですか。と奢るのってどうなのだろう。

 

 

そのまま無視して帰るべきか。

 

コンマ何秒か迷った後、色々考える。

 

 

というのも、昨夜は仕事を終えるのがいつもより遅くなり急ぎ足で帰ってたんです。

 

 

そして、いつもは通らない道を歩いてた。

 

 

そして何より

 

 

昨夜はパチンコに勝っていました。(ここ重要)

 

 

 

これは…偶然だろうか。

 

それともそういう運命なのか。

 

 

もちろんパチンコに負けていたら話聞いてないでしょう(笑)

 

 

「おっちゃんいつから食べてないの?」

 

 

「…3日前から何も・・・幸い水だけは公園がありますからそこで何とか。」

 

 

「どっから来たん?」

 

 

「どこからってのは無くてですね…。ただただ歩いて回ってます。仕事を探しながら。どこから来たのかも分かりません。お恥ずかしい。」

 

 

「おっちゃん、悪いけどコンビニで俺が買うのは勘弁して。」

 

 

「??」

 

 

「だいたい恥かしいし、パシリじゃないし。」

 

 

「いえ、私はそういう風な事は…」

 

 

「まぁまぁ。んでね?小銭をおっちゃんにあげるから。それでいい?」

 

 

この時、なぜこんな行動に出たのかは分かりませんが気づいたら財布に手を伸ばしていました。

 

 

男は涙目で何度も「ありがとうございます」と呪文のように呟き

 

小銭入れから200円だけ渡し、

 

私は「がんばりや」とだけ言い残しまた駅に向かいました。

 

 

 

中越しにまた聞こえる「本当にありがとうございました!」

 

 

さっきより大きく、さっきよりかすれた声

 

 

 

20メートルくらい歩いて振り返ったんです。おっちゃんまだいるかなって。

 

 

そしたらまだ私を見てました。そしてこっちに気づきまた頭を下げました。

 

 

 

 

 

 

これね?

 

 

なんでしょう。いい事をしたのか。ただの自己満なのか。

 

 

偽善なのかなんなのか。

 

 

しばらくしてモヤモヤが出てきました。

 

 

たった200円。

 

 

されど200円。

 

 

 

働いてない(働けないのかどうなのかは不明)見知らぬ男に渡した200円。

 

 

ひょとして同じように何人も声をかけ味をしめてるのか。

 

 

今となっては分かりません。

 

 

結局私がしたことは間違ってたのかどうなのか。

 

 

まぁ、自分の金ですし?

 

 

誰に文句言われるような筋合いもないんでしょうが。

 

 

ちょっと引っかかってですね。

 

 

おっちゃんを信じようと。

 

 

そう思う事でしか納得できないんですね。もうお金あげちゃったから。

 

 

あの200円でおっちゃんが1日でも2日でも生き延びる事ができたならそれでいいやと思いました。

 

 

そして、昨夜の出来事がいつか困ってる自分に何らかの形で返ってきたらいいなと思いました。

 

 

モヤモヤした夜でした。

 

 

 

電車には乗り遅れました。

 

 

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あのクソジジイが!!!